法話
大乗(2014年12月号) みほとけとともに掲載分③
本願寺出版社さまから刊行されている「大乗」に寄稿させていただきました。
浮かれ騒ぐ良い時期など月の満ち欠けのように失われていくのだ。全て思い通りになるなど思うべくもない。移り変わる世の中を、夜毎に姿を変える月のように、したたかに生き抜いてみせる。
今、私が藤原道長と聞いて思うのはこのような人物像です。
仏法の柱である諸行無常という教えをとおして見ると、それまでとは異なるものの見方が開けてくるように思われます。
龍樹菩薩が阿弥陀仏の浄土に往生することを願って、阿弥陀仏を礼拝讃嘆された「十二礼」には次の一偈が印象的です。
「諸有は無常・無我等なり。また水月・電の影・露のごとし。
衆のために法を説くに名字なし。ゆゑにわれ、弥陀尊を頂礼したてまつる。」
いつ、どこで、何が起こるか分からない世の中を、限りある命を、阿弥陀仏のお慈悲のはたらきの中、ひたすらに生きる。
必ず死に帰する人生が、お念仏に照らされると必ずお浄土へと生まれさせていただく人生へと転換されていきます。
歴史上の人物ではなく、同じ人の世を生き抜いたお念仏の先達として、藤原道長を認識し直したお通夜帰りの夜でした。